フジテレビ系木曜ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系/以下、『めおと日和』)が話題だ。本作は、昭和11年に主人公のなつ美(芳根京子)が突然の縁談で帝国海軍に勤める瀧昌(本田響矢)のもとに嫁ぐところから始まるラブコメディで、恋愛に不慣れな2人のもどかしくも愛おしいやりとりに癒される人が続出している。
また、同じく昭和初期を舞台にしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』の第8週(5月19日~5月23日放送)では、ヒロイン・のぶ(今田美桜)がお見合いで出会った次郎(中島歩)と婚約を果たした。まだ登場してわずかながら、誠実で穏やかな性格の次郎は、後にのぶの夫となる嵩(北村匠海)に匹敵するほどの人気だ。
アニメでは、大正ロマンを思わせる時代を背景に、エリート軍人・清霞と家族に虐げられて育った名家の娘・美世の政略結婚から始まる恋を描いた『わたしの幸せな結婚』(以下、『わた婚』)が大ヒット。今、大正から昭和初期を舞台にした交際ゼロ日婚から始まるラブストーリーが注目を集めている。
“交際ゼロ日婚”が現代人に響く理由とは? 『わた婚』好きに観てほしい『めおと日和』
不倫、復讐、托卵、風俗など、刺激的な題材を扱った作品が増加傾向にある日本のドラマ。今期も過激なタイトルが並び、放送前から物議を醸…
2017年に結婚情報誌『ゼクシィ』のテレビCMで話題となった「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というコピーが物語るように、結婚相手が自由に選べるのはもちろんのこと、結婚するか否かも本人の意志に委ねられた現代。多くの場合、当人たちの意志にかかわらず、第三者の判断によって勝手に結婚相手が決められるお見合いや縁談は今の時代に逆行しているように思える。しかし、SNSの反応などを見るに意外と若い世代に好意的に捉えられているのはなぜなのだろうか。
まずもって、ヒロインたちの出会う男性がことごとく素敵な人であることが最大の理由だろう。男尊女卑の風潮が色濃く残る戦前の日本(『わた婚』はあくまでも架空の時代が舞台だが、旧来的なジェンダー観が登場人物たちの言動から見えてくる)において、瀧昌も次郎も清霞も妻を愛し、その意思を尊重する稀有な男性たちだ。かつ全員エリートで見目麗しい。現代ならば女性たちから引く手数多であろう彼らのような男性と宝くじ的な確率で結婚できるかもしれないというのは、確かに夢がある。
『波うららかに、めおと日和』©︎フジテレビ
また効率や時間対効果を重視する若者に、結婚を前提としたお見合いや縁談の手っ取り早さがウケているのではないだろうか。『めおと日和』の公式サイトのイントロダクションでは「昨今、コスパ・タイパ重視される現代社会。しかし本作は、そんな時代とは打って変わり、新婚夫婦の“大切なひととき”を緩やかに紡ぐ」という文言があるが、今の若者はそれ以前、つまり結婚相手を探す方に時間を要している。