NHK連続テレビ小説『あんぱん』は舞台が1940年代に入り、のぶ(今田美桜)たちのような一般家庭にもより一層、戦争の影響が色濃く出てきている。

 特に活動が活発になってきているのが「大日本国防婦人会」である。朝田家でも母の羽多子(江口のりこ)と妹のメイコ(原菜乃華)が加入し、割烹着に勇ましい赤いたすきを掛け、町内会の掲示板にお知らせを貼っていた。また、のぶへ縁談を持ちかける大日本国防婦人会の人たちもたくさんいた。

『あんぱん』“ばいきんまん”中尾隆聖が登場 のぶに押し寄せる“20歳の風圧”

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第8週が幕を開けた。第36話では、戦争色の強まりとともに、のぶ(今田美桜)に“20歳の風圧”が押…

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 この「婦人会」は、戦時中に実際にあった組織で、出征兵士の見送りや兵士たちの士気を鼓舞するために、中に日用品などを入れて送った慰問袋を作る活動をしていた。「婦人会」の活動は、満州事変や上海事変が起こった1930年代前半に大阪の主婦らが出征兵士や応召のため帰郷する若者に湯茶を振舞ったのが始まりとされている。それが広まり、軍とは直接のつながりのない婦人たちが「大阪国防婦人会」を発足。さらに軍の支援を取り付けて「大日本国防婦人会」となり、全国に拡大した。

 彼女たちの活動は結果として戦争の“後方支援”をしていることになるのだが、あくまで自発的にやっていることで、その背景には「兵隊にはなれないが、国のために何かしたい」という強い思いがある。この思いはまじめで、元気で、明るくて積極的な「愛国の鑑」であるのぶの性格によくマッチするもの。だからこそ、朝田家のほとんどは快く活動に参加していく。

 実際に存在していた「婦人会」は、当時の様子をよく表すものであり、近年の朝ドラにもたびたび登場する。ただし、そこに属する婦人たちのキャラクターはかなり強烈だ。昭和の時代に人々の心に寄り添う数々の曲を生み出した作曲家・古関裕而の半生をモデルとした物語の『エール』(2020年度前期)では、大日本帝国婦人会の班長・佐々木克子(峯村リエ)が登場。主人公・裕一(窪田正孝)の妻・音(二階堂ふみ)は大日本帝国婦人会の会合に積極的に参加していなかった。克子はそのことで軍人の妻だった音の姉・吟(松井玲奈)を激しく叱責した。その後、音は吟に連れられ会合に参加し、音楽挺身隊として軍需工場で慰問を行うが、音はこのような“後方支援”には最後まで乗り気になれなかったようである。

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