松本清張の『西海道談綺』(字幕付き)第2話 松平健 古手川祐子 丹波哲郎 三波豊和 中村敦夫 宮内洋

​《ストーリー》
江戸に着いた恵之助(松平健)は 宗全(丹波哲郎)から「面白ところに案内しよう」と誘われ 付いて行くとそこは博打場だった その途中上意討ちに遭う 追っ手は すでに江戸にまで及んでいたが 持ち前の剣術で追い払うと そこに現れたのは柳橋の船宿「上総屋」の芸妓 梅香(おえん、古手川祐子) 初対面だったが 互いにどこか惹かれ合うものを感じていた

―― これより先は ネタバレに注意 ――

その日の宗全はツキがなかった 備前屋(小沢象)との勝負に負けて100両の手持ちが8両になってしまい ならばと 駄目元で博打を知らない恵之助に勝負を託した するとここから流れが一変し 最後は備前屋との差し勝負にも勝って まさかの捲り 宗全の懐に元手の倍のカネが転がり込んできた

これで上機嫌となった宗全は おえんに「あいつは天涯孤な身の上だ しばし慰めてやれ」と申し付け 一夜を共にした恵之助だったが おえんは自分が凶状持ちであることを知らない その後ろめたさもあって 今一歩近付けない おえんはそれを歯がゆいと感じていた

翌日 恵之助は宗全から養子縁組を持ち掛けられた 相手は180石 小普請組 太田半左衛門 持参金は400両だが博打で勝った200両に 差額200両は宗全が出すという 数日後 勘定奉行 長谷川和泉守より辞令の書付けを手渡された恵之助は 小普請組旗本 その姓も太田へと変わり これにより凶状持ちの伊丹恵之助という名はこの世から消え去った

宗全には狙いがあった これはご公儀のため 是非とも山に詳しい恵之助の力が借りたいと 勤務地は西海道 豊後の日田地域で 郡代屋敷に出役して殺害された手付鈴木の疑惑を晴らすこと もう一つは 長崎のオランダ商人たちに我が国の金が流れているらしいが ご公儀の目の届かない隠し金山があるに違いない 殺された鈴木は 豊前豊後あたりと目星を付けたようだが それは一体どこなのか

恵之助は覚悟を決めて 若党嘉助(三波豊和)とともに大阪から瀬戸内海を経て遠路九州へ向かった 途中 旅の垢を落そうと湯山(熊本県)の露天風呂で体を休めていると 昔馴染みの振矩師 甚兵衛(中村敦夫)にばったり出会い 恵之助は 訳あってもう勝山藩士ではないと漏らすと 甚兵衛もまた ここへは仕事ではなく湯治のために来ていると打ち明け 恵之助が部屋に戻ると 廊下から甚兵衛の座敷に白髪の女の姿が見えた

ようやく目的地の西国郡代に着いた恵之助は 上司となる日田郡代の高林伝七郎(小泉博)を訪れ 恵之助と同役の公事方手付けの向井平三郎(宮内洋) 直属の部下となる浜島孝介(島田順司)らを紹介され 早速 日田七軒衆(札差)から招待があるようだと告げられたが それよりも鈴木が殺された四日市に行ってみたいと言ったとたんに場の空気が一変した そしてその道案内として公事方書役 村上平八(狩野勝行)が自ら名乗り出た

【養子縁組】ようしえんぐみ
江戸時代における養子縁組は 家制度の維持 家業の承継 相続などの目的で広く行われていた

【振矩師】ふりがねし
鉱山の間切 切山 煙貫きなどの工事に当たる 鉱山付測量技術者

【札差】ふださし
江戸時代に幕府から旗本 御家人に支給される米の仲介を業とした者

【若党】わかとう
江戸時代 足軽よりも上位の小身の従者

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