2024ー25年の期間内(対象:2024年12月~2025年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。プロ野球インタビュー部門の第3位は、こちら!(初公開日 2025年3月29日/肩書などはすべて当時)。

今年度、30歳を迎えた大谷翔平世代、いわゆる1994年度生まれの代。かつて世代の先頭を走っていた男こそ、藤浪晋太郎(マリナーズ)である。藤浪が阪神時代に浴びた「他人の意見を聞き入れないから復活できないんだ」という批判の声。だが筆者は「生意気な印象はなかった」と戸惑う――米・アリゾナの地で藤浪本人に聞く。【NumberWebノンフィクション/全6回の4回目/5回目へ】

 阪神ファンの間で「161球事件」と呼ばれている試合がある。その試合は確かに「事件」と言いたくなるほどの不可解さに満ちていた。

 2016年7月8日の広島戦で、先発した藤浪は初回に2つのフォアボールを許すなどし、いきなり3失点。途中、明らかな交代期があったにもかかわらず8回まで続投させられ、計161球を投げ、最終的に8失点し負け投手になった。

 試合後、監督の金本は「何点取られようが、何球投げようがと思っていた」とコメントし、続投はローテーションの柱として期待していた藤浪に対する懲罰の意味合いが強かったことを認めた。

「金本さんの161球というのがありましたけど……」、そう問いかけると、藤浪は「ありましたね」と意外なほど軽やかに受け止めた。

「あのことがトラウマになっているということはないんですけど、あの試合が金本さんをはじめとする首脳陣が自分に対して思っていたことを象徴しているんです。象徴……象徴的な行動なんです。ローテーションピッチャーが情けない、なんて投球をしてるんだ、と。あと、さっきも言いましたけど、(藤浪は)野球をなめてんのかっていう。自分はローテーションで投げてるピッチャーがこれで肘が飛んだらどうするつもりなん? くらいにしか思ってなかったんですけど」

 象徴、象徴、象徴。藤浪は同じ言葉を三度、繰り返した。

 この采配は、さまざまな議論を呼ぶことになる。当時はどちらかというと金本采配に批判的な意見の方が多かったように記憶している。

 ただ、このセンセーショナルな懲罰登板の印象が藤浪の「劣等生」というレッテルになってしまったことは否めなかった。

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