エイジング 広告

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エイジングケアをスローガンとしたキャッチコピーやスキンケア製品ばかりが前面に出るなか、50歳以上の女性は美容ブランドの広告にほとんど登場しない。最新の報告書が示す内容を詳しく見ていこう。

美容ブランドは50歳以上を見過ごしているのか

50代以上の女性は人口においてその割合を増やし続けており、高い購買力を持ち、日常的にスキンケア製品を購入している。それにもかかわらず、美容広告では50代女性の姿がほとんど見当たらない。このパラドックスは、2025年初頭に開催された国際フォーラム「Openstreams Global Beauty Industry Summit」で発表されたレポートによって明らかになった。

フランスを含む7カ国、1000人超の消費者を対象にした調査では、世界の美容広告で50歳以上の女性が登場する割合は5%未満。人口動態とメディア表現の落差は歴然だ。報告書は「人口は急速に高齢化しているのに、50歳以上の女性は美容広告からほぼ姿を消している。業界が多様性を掲げる一方で、年齢に関する考え方はほとんど進んでいない」と分析する。多様性への取り組みで知られるブランドでさえ年齢の壁を打ち破れず、登場する50歳以上の女性は決まってアンチエイジング商材の顔役。老化だけに焦点を当てた固定観念的な演出は、決して支持を得ているわけではない。

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現行製品に「自分」を見出せない女性たち

7カ国で行われた調査では、回答者の半数が「市販のアンチエイジング製品は自分の本当のニーズに応えていない」と感じている。また、「年齢を重ねた消費者層は、今の美容業界に理解されておらず、さらには十分なサービスを受けていないと感じている」と報告書は指摘する。つまり彼女たちは、ブランドの語り口にも処方設計にも、そして広告ビジュアルにも自分の姿を見つけられないというわけだ。調査はさらに、50歳前後の女性が持つ期待と、実際に提供される製品との間に大きな隔たりがあると強調する。それでも彼女たちは、美容情報を最も熱心に収集し、実際に試し、購入まで最も積極的な層だ。「彼女たちに語りかけないのは、極めて戦略的なターゲットを見過ごすことに等しい」とレポートは警鐘を鳴らしている。

長らく“老化のサインと戦うこと”に絞られてきた広告軸に対し、50歳以上の女性たちはいま、より包括的でポジティブ、かつステレオタイプから脱却した自由なアプローチを求めている。シワを撃退したりカモフラージュしたりするために狙い撃ちするのではなく、他の世代と同じように自分のスタイルや活力、スキンケア観を堂々と表現したいというのが彼女たちの本音だ。

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Related Storyなぜこれほどのギャップが生まれるのか

報告書が突き止めた主な原因は、SNS を中心に拡散する“若さ崇拝”である。62.3%の消費者が「ソーシャルメディアは若さを美の理想として持ち上げている」と回答した。「実際の加齢体験とメディアが描く美のイメージの間には、拡大しつつある溝が存在する」とレポートは指摘する。

こうした風潮のもと、多くのブランドは年齢に寄り添うよりも若い肌のため、あるいは時間を遅らせることを前面に掲げた広告や製品を開発し続ける。シワを隠す、なめらかにする、修正する、消すといったアンチエイジング用語が象徴的だ。結果として、老化は“即座に修復すべき欠点”と化す。だが調査は、「50歳以上の女性を包摂することは単なる表現の問題にとどまらず、明確な成長機会である」と断言する。

実際に軸足を移しつつあるブランドも現れ始めた。「ロレアル パリ」はジェーン・フォンダ、ヘレン・ミレン、近年ではジリアン・アンダーソンをミューズに起用し、「ダヴ」も多様な年齢の女性を広告に登場させている。ただし、こうした試みはまだ例外的で、業界全体の潮流になるには至っていないのが現状だ。

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Realization : Elisa Casson、Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI。出典:ELLE.fr

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