君嶋彼方による小説『君の顔では泣けない』の実写映画化が決定し、芳根京子とKing & Princeの髙橋海人が出演することが発表された。
芳根京子とKing & Prince 髙橋海人が初共演 『君の顔では泣けない』11月公開決定
芳根京子が主演を務め、King & Princeの髙橋海人が共演する映画『君の顔では泣けない』が11月に全国公開されるこ…
芳根は主人公・坂平陸、髙橋が陸と数奇な運命を共有することになる水村まなみを演じる。 女性が男性の名を持つ役を、男性が女性の名を持つ役を演じるということで、勘の良い人は分かるかもしれない。本作は創作物の古典の一つとも言える「入れ替わりもの」の作品だ。
原作は、第12回「小説 野性時代 新人賞」を受賞し、2021年に発売された君嶋彼方のデビュー作である同名小説(受賞時の「水平線は回転する」から改題)。坂平と水村は高校1年生のときに入れ替わり、それから15年間入れ替わったまま生活を送ることになる。
ひょんなことから心と身体が入れ替わる物語は、映画『君の名は。』のように入れ替り自体がミステリ的な鍵を握る意味がある物語や、ドラマ『民王』(テレビ朝日系)や『パパとムスメの7日間』(TBS系)のように、全く生活スタイルの異なる二人が入れ替わったことで日常に翻弄され、入れ替わった先でそれぞれが行うことが周りに影響を及ぼしていく物語があるが、驚くことに『君の顔では泣けない』はそのどれにも分類されない。
本作では、入れ替わり自体に意味を求めたり、特段大きな事件に翻弄されたりということはほぼない。ただ、そこにあるのは他者の人生、もう一つの性別を生きることになった戸惑い、元の性別と人生への愛着だ。自分ではない身体を生きなければならなくなったとき、人は何を思うのか。小説ではそれが克明に描き出されている。もし本当に入れ替わりが起きたら自分はどう生き、何を大切にしたいと思うのだろうかと考えてしまうほど。古典的なファンタジー設定でありながら、自分の人生をどう選び取っていくのかという現代にも通じるテーマを思わせる。