田沼意次と嫡男で暗殺された意知の墓がある東京駒込の勝林寺(写真:a_text/イメージマート)
NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第17回「乱れ咲き往来の桜」では、蔦重が新刊を続々と刊行。耕書堂の認知度は急上昇するが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
人形浄瑠璃に「蔦重」をモデルにした人物が登場
「安永9年10月、蔦重は10冊もの新刊を一挙、刊行。そんなこんなで、蔦屋、耕書堂の人気が急上昇──」
綾瀬はるか演じる九郎助稲荷(くろすけいなり)による、そんなナレーションが流れたように、今回の放送回では、蔦重が開業した耕書堂の好調ぶりがよく伝わってきた。
驚くべきことに、蔦重に会えることを目当てに店にやってくる女性客まで現れた。人形浄瑠璃で蔦重をモデルにした人物が出てきて巷で話題になり……というシーンが冒頭で放送された。
実際に安永9(1780)年に初演が行われた烏亭焉馬(うてい えんば)作の『碁太平記白石噺』(ごたいへいきしろいしばなし)には、7段目「新吉原の段」に「本重」と呼ばれる貸本屋が登場。こんなセリフを言っている。
「此間お頼申しました女郎様方の名前、書き付けてくださりませ、細見を急ぐので」
ここから本重のモデルは蔦重だと見られている。この頃には、蔦重の名はそれなりに知られていたのだろう。