「Superfine: Tailoring Black Style(華麗なるブラック・スタイル)」をテーマに掲げた今年のメットガラは、ブラックスタイルの歴史と革新を称える場であると同時に、ミニマルとマキシマルの対比が随所に光る夜でもあった。それはネイルにおいても同様。精緻なアートワークと高度なテクニックを軸に、“今”のラグジュアリーを映し出したのが、川尻メイと工藤絵美のふたりの日本人ネイリストだった。
川尻メイ/流線的かつ立体的な装飾で魅せる
川尻メイが手がけたのは、FKAツイッグス、ジジ・ハディッドといったビジューやメタリックなど輝きを帯びたディテールのドレスをまとって登場したセレブリティ。
Photo: Mike Coppola/MG25/Getty Images for The Met Museum/Vogue
Photo: Courtesy of May Kawajiri
FKAツイッグスには、立体的なメタルジェルパーツを大胆に配置したスカルプチュラルネイルを。ヌードトーンのベースに輝く異素材のコンビネーションが、彼女の幻想的な存在感に重なるようにデザインされた。
Photo: Savion Washington/Getty Images
Photo: Courtesy of May Kawajiri
ジジ・ハディッドには、ゴールドクロームのアートを効かせたアーモンドシェイプのチップを採用。肌なじみのよいピンクベージュに、炎のようにのびるゴールドの縁取りとストーンをあしらったデザインは、まさに“クチュール”の名にふさわしい完成度だ。
工藤絵美/精密なシェイプとハイシャインへのこだわり
Photo: Michael Loccisano/GA/The Hollywood Reporter via Getty Images
Photo: Courtesy of Emi Kudo
一方で、工藤絵美が担ったのは、精密なフォルムコントロールと光沢表現にこだわったネイルデザイン。ミディアムレングスのスクエアオフをグロッシーに仕上げ、潔く洗練されたウグバドの艶ブラックネイルは、究極にミニマルながらクチュールルックの構築的な強さと見事に呼応していた。
Photo: Kevin Mazur/MG25/Getty Images for The Met Museum/Vogue
Photo: Courtesy of Emi Kudo
セイディー・シンクの指先には、アプレ(APRÈS)の「Forgotten Film」を使用した、白とベージュのニュートラルでナチュラルなネイルを施した。プラダ(PRADA)の装いを引き立てる、静謐さと柔らかさのバランスが絶妙。
「傾向としては、やはり本年初頭に予想した通りスクエアが人気で、マットよりグロッシーに軍配が上がりました」と工藤は語る。日本人ならではの繊細さと観察眼を武器に、精度の高いフォルムや光の捉え方にこだわる。シンプルなデザインだからこそ、際立つ技術があった。
きらびやかなディテールで魅せる装飾的なネイルと、精緻な技術に裏打ちされたミニマルな仕上がり。メットガラ2025のネイルシーンにおいて、川尻メイと工藤絵美は、それぞれ異なるアプローチから“美”の新たな在り方を提示してみせた。
Text: Makiko Yoshida Editor: Rieko Kosai