真藤順丈氏の直木賞受賞小説を映画化した『宝島』の完成報告会見が5日、東京・丸の内TOEIで行われ、出演の妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝と大友啓史監督が出席した。
米国統治下の沖縄・コザ(現沖縄市)を舞台に、米軍基地から物資を盗み市民に供給していた「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちが、暴力と混とんの中を生き抜いた20年を史実を基に描く壮大な叙事詩。企画は2019年に動き出したが、コロナ禍による2度の撮影延期に見舞われるなど製作は困難を極めた。大友監督は、「あきらめようかと思ったこともあったが、ようやくここまでたどり着いた。俳優たちが待ってくれ、素晴らしい演技を見せてくれたことが心強くうれしかった」と安どの表情を見せた。
妻夫木聡主演映画『宝島』完成報告会にて ©︎The Hollywood Reporter Japan
こつ然と姿を消した戦果アギヤーの英雄オンを捜し続ける刑事グスク役で主演の妻夫木は、2006年『涙そうそう』以来の沖縄ロケ。「コザの人たちとはいまだに仲良くしていて、原作を読んでどこから導かれているのかもしれない運命的なものを感じた。現地の人の声なき声を届ける使命感があった」と説明。完成した作品を見て、「作品が持つ圧倒的な生命力を感じた。死は終わりを意味するものではなく、死があるからこそ生がある。シンプルに生きていかなければいけないと心の底から思った」と言葉に力を込めた。
映画『宝島』出演の広瀬すず ©︎The Hollywood Reporter Japan
オンの恋人ヤマコ役の広瀬も、「難しくて苦しみ、もがきながらも凄く楽しい濃厚な毎日でした。お芝居に対してエネルギッシュな感覚を得られたうれしい経験でした」と満足げな笑顔。オンの弟レイ役の窪田は、「彼らにとっての死は、今と全く違う感覚。次の瞬間、奪われるかもしれないという、生と死が隣り合わせだからこそ全力で生きるという彼らの思い、魂が感じられた」と沖縄の人々に思いをはせた。
窪田正孝 映画『宝島』完成報告会見にて ©︎The Hollywood Reporter Japan
妻夫木は自ら宣伝アンバサダーに就任し、6月7日の沖縄プレミアを皮切りに全国キャラバンを展開する予定。既に静岡、富山、長野、北海道でのキャンペーンが決まっており、「映画はビジネスですが、『あー、良かった』で終わりにしたくはない。映画で世界は変えられないが、覆すような底力があると信じています。だから、直に声を届けたい。全国を駆け巡ります」と意欲を語った。
大友監督は「こん身の作品です」と宣言。「6年という時間をかけて、持っているものを全て懸けた。僕も俳優たちの芝居を興奮して見ていた。誰もがその境遇に置かれたら、生きていけるのだろうかという最後の一線を探っている映画。手応えはある」と自信のほどを語った。
映画『宝島』大友啓史監督 ©︎The Hollywood Reporter Japan
『宝島』は、9月19日に全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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