お台場のライブ・エンタテインメント施設「イマーシブ・フォート東京」に、2025年4月末より新たなプログラム『真夜中の晩餐会 – Secret of Gilbert’s Castle – 』が登場。2万円超えという超プレミアチケットにもかかわらず完売日が続出する理由とは!? 演劇ともテーマパークとも違う、新感覚のエンタメ“イマーシブ演劇”の新プログラムをいち早く体験した。

イマーシブ・フォート東京『真夜中の晩餐会』

役者と観客がつながるイマーシブ演劇

映画や舞台に心を震わせたことがある人なら、誰だって一度はその登場人物になってみたいと思ったことはあるだろう。主人公とともにその世界を歩き、会話をかわす。そして自分のひと言、一挙一動がストーリーに関わっていく、なんてことがあったなら――。

そんな妄想に胸を膨らませることを、決して「年甲斐もなく」なんて思わないでほしい。なぜなら「イマーシブ・フォート東京」は、そんな大人こそが愉しめる場所なのだから。

2024年3月に開業したこのイマーシブ・フォート東京は、観客が本格的な舞台セットの中をキャストとともに歩き回りながら演劇世界に没入できる劇場だ。

これまで、江戸の花街を歩きながら物語を追っていく『江戸花魁奇譚』や、19世紀のロンドンの街並の中でシャーロック・ホームズとワトソンとともに殺人事件を解明する『THE SHERLOCK』などで、熱狂的なファンを獲得してきた。

イマーシブ・フォート東京『真夜中の晩餐会』イマーシブ・フォート東京は、かつて「ヴィーナスフォート」として親しまれていた広大な商業施設の建物をそのまま舞台セットとして活かしている。

そして、2025年4月25日から始まった最新作『真夜中の晩餐会 – Secret of Gilbert’s Castle – 』(以下、真夜中の晩餐会)は、その集大成ともいえる作品。海外の事例でも類を見ない濃密かつ緻密に計算された設計で、実際に晩餐会で食事を楽しみながら、19世紀フランスを舞台にした貴族たちの物語を2時間みっちり体験、没入することができるという。

「世界中のさまざまなエンタメを見てきましたが、ロサンゼルスで初めてこの体験型のイマーシブ演劇を体感して、それまで味わったことのない衝撃を感じたんです」

とは、『真夜中の晩餐会』のクリエイティヴ・ディレクターを務める、マーケティング・プロフェッショナル集団「刀」の興山友恵氏。欧米では建物をまるまる舞台として使用するなどして、観客を巻きこむこのイマーシブ演劇が1990年代から登場していたが、その体験を日本でも提供したいと、このイマーシブ・フォート東京を舞台にヒット作を連発している人物である。

、『真夜中の晩餐会』のクリエイティブ・ディレクターを務める、マーケティング・プロフェッショナル集団「刀」の興山友恵氏興山友恵/Tomoe Okiyama
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでハリー・ポッターのショーの開発や、日本初のイマーシブシアターの制作に携わったのちマーケティング・プロフェッショナル集団・刀に所属。イマーシブ・フォート東京では『江戸花魁奇譚』『フォルテヴィータ事件簿』のクリエイティヴ・ディレクターを務め『真夜中の晩餐会』が3作目となる。

晩餐会の招待客になって物語に加担していく興奮

『真夜中の晩餐会』は19世紀フランス、ある貴族の娘の婚約パーティが舞台。50人の観客には受付で晩餐会への招待状が渡され、そこには自分の役名、設定が記されている。ある観客は貴族の娘の学友として、ある観客はこの屋敷の主人と旅先で知り合った貴族として――などの設定があり、役によっては事前にミッションを与えられる場合もあるという。

まず観客は屋敷のメイドたちに案内されながら、晩餐会の会場へ。その道すがらも自分の横を歩く登場人物たちの会話が聞こえてきて、物語が進む気配を感じる。

晩餐会では実際に、前菜、メイン、デザート、さらにアルコールとノンアルコールのドリンクの提供が。晩餐会に招かれているのだから隣の席に座った他の観客と話してもかまわないし、キャストから話しかけられることもある。

イマーシブ・フォート東京『真夜中の晩餐会』晩餐会中、キャストに誘われ観客がダンスを踊ることも。うまく誘導してくれるので、そこはご安心を。

「通常の映画や舞台では、観客はスクリーンや舞台の方を向いていて、『このシーンを見てください』と提示されますよね。一方で本作は、晩餐会の会場に観客もキャストも混在して集います。ひとつの空間にゲストは50人、キャストは25キャラクターいて、あちらこちらで物語が同時多発的に展開されていくんです。観客はその世界を自由に動けますので、どう動くかによって見えてくる物語が違ってきます」

食事の途中から観客は邸宅内を自由に歩き回れるようになり、いる場所によってはキャストに別の部屋に導かれ、数人しか見ることのできない重要なシーンを目撃することも。しかしその間にもまた別の部屋では、違う物語が立ち上がっていく。

「観客にはランダムに役が与えられ、その役によっても作品の見え方が変わるんです。何度も訪れて、作品の別の側面を味わってほしいと思っています」

ストーリーの詳細は語れないが、叫び声のする方へ駆け寄れば事件が起きていたり、さらにそこから走り去る人物を追いかけてみれば、また新たな展開が始まったりと、「次はあっちか!?」「こっちはなんだ!?」と物語に翻弄されまくる。自分自身が物語にのみこまれ没入していく感覚は、これまでに味わったことのないものだ。

イマーシブ・フォート東京『真夜中の晩餐会』物陰に隠れ、登場人物たちの秘密の会話を目撃!?

息遣いまでも感じる距離感で役者の仕事を見る

通常、役者と観客は「舞台」と「客席」という、それぞれいるべき場所があり、どんなに小さな劇場でもそこには物理的・心理的距離が存在するものだ。けれどこのイマーシブ演劇の場合は違う。観客も役者と同じ舞台に立ち、役者は時に観客に触れ、観客のうちのひとりだけの目を見つめて話しかけることもある。観客がどう動くか、そして何を言うかでも役者の動きは変わってくるし、さらに観客は役者の後ろにも横にもいる。360度から見つめられているのだから、その演技は一瞬のほころびも許されない。

まさに、役者というプロフェッショナルの仕事を目の前で体感できる、これ以上の場所はないだろう。

「『もしお客さんがこっちに行ってしまったら』など、数十パターンのハプニングを想定してあり、その場合の対応も役者は全員頭に叩きこんでいます。もちろんそれ以外の予期せぬハプニングもあるでしょう。けれど、物語の世界観と役への理解度が高ければ『自分の役の人物ならどう動くか』を瞬時に考え、臨機応変に動くことができるんです。ですから役者とは徹底的に作品と役についてディスカッションを続けています。

一方制作で難しかったのは、タイムラグが起こること。会場のあちこちで物語が発生し、さらにそれは観客の反応によって変わってきますから、どうしてもメインの物語を進行させるためのタイミングがズレる場合があります。脚本上では成り立っていても、実際にやってみないとわからない。ですからテストを行い調整するという作業をスタッフ、キャストとともに何度も繰り返し行って、やっと完成させたんです」

映画や舞台と違い、セットの隅々まで観客は歩き回ることができるゆえ、大道具小道具にも妥協がない。実際に大道具の一部には海外から運んだアンティーク家具なども使用されているという。まさに「好きな作品の世界に入りこみ隅々まで見て回りたい」と願ったことがある人にとっては夢のような劇場だ。

本作は2時間の公演で24,800円という、歌舞伎座の一等桟敷席より少し高い金額になっている。しかしキャスト25人に対してゲスト数が50人と限られていて、自分のためだけに演じてくれるシーンもあるのだから決して高くはないだろう。演劇を愛し、いつか作品世界へ没入してみたい、そう憧れ続けた文化度の高い観客たちが集い、ともに物語を完成させる様子は、まるでラグジュアリーなクルーズ船に乗り合わせ、旅をともにするゲスト同士のようでもある。

「テーマが晩餐会ですから、クルーズ船の旅同様、観客の方々にも社交の場としても使っていただけたらいいですね。せっかくなので、思いっきりお洒落をしていらしてください。演劇や映画がお好きでさまざまなエンタテインメントをご覧になってきた方でも、きっとこのイマーシブ演劇というものは、まったく新しい経験になると思います」

何歳になっても、どんなに経験を積んでも、新しいものを探し続ける人は進化を止めない。エンタメのまったく新しいフォーマットをイマーシブ・フォート東京で体感して、さらに自分自身をアップデートしていってほしい。

『真夜中の晩餐会 – Secret of Gilbert’s Castle – 』

19世紀フランスの貴族、ジルベールの邸宅の晩餐会に招かれ、それぞれの思惑を胸に秘めた登場人物たちと行動をともにすることで、ある真実が浮かび上がってくる。美しい青年に個室でダンスに誘われたり、目の前で悲しく歌う令嬢の歌声を聴いたり、麗しい女性と賭け事をしたり、夢のような体験があなたを待ち受ける。

イマーシブ・フォート東京『真夜中の晩餐会』

会場:イマーシブ・フォート東京
住所:東京都江東区青海1-3-15
期間:常設公演
料金:¥24,800
体験時間:120分
年齢制限:18歳以上

問い合わせ
イマーシブ・フォート東京 https://immersivefort.com/

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