ヴィスコンティとシャネルは、物事に同じような美しさを求めていた。豪華でありながら威厳があり、型にはまらずも上品で、一見造作なく見えるが雅やかさに根差した美しさを。クルーズコレクションはそんな2人が追い求めたものを、そのままなぞり懐かしむのではなく、シックでありながらゆったりとした空気感を漂わせた、夏らしいルックの数々に落とし込んだ。そのすべてがイタリアのリゾート地での日々を想起させながらも、フランスのサヴォアフェールと技巧を駆使している。

メゾンのコードが呼び起こす、美しい夏のひととき【シャネル 2026年クルーズ】美しきコモ湖で紡がれる、シネマとファッションの物語

Photo: Courtesy of Chanel

ビーチウェアとしても纏えそうなローブとしなやかなサテン地のイブニングガウン、2つの白いアンサンブルがそれぞれオープニングとフィナーレを飾ったコレクションは、創意工夫に富んだデイウェアを中心としていた。ヴィラ デステを彷彿とさせる、太陽を浴びたようなオークルトーンに、花づなのように咲く庭園のウィステリアの花と同じパステルカラー。時折登場するブーゲンビレアやカメリアから着想されたビビッドな色合いとモチーフ。煌めくマットゴールドのクロッケ生地のパジャマセット。ロングケープの下から光り輝く、背中を大きく開けたピンクとオレンジのストライプのラメジャンプスーツ。色鮮やかなスパンコールをあしらった、ライラック色のクラシックなツイードスーツと同色のブラウス。ヴィンコンティ監督のオムニバス映画『ボッカチオ’70』の一編で、ロミー・シュナイダーが身にまとったシャネルのルックを呼び起こす、マクラメやクロシェ、繊細なレースで奥行きを与えた細身のシルエット。ショーの終盤に登場した、軽やかタフタ生地のブラックのイブニングガウン。そしてそれらを漂う、センシュアルな魅力。

ショーを見守っていたのは、シャネルに身を包んだセレブたち。その中には今回のティザーフィルムを手がけたソフィア・コッポラ監督と夫のトーマス・マーズ、ルピタ・ニョンゴ、キーラ・ナイトレイ、マーガレット・クアリー、アンナ・ムグラリスなどの姿があった。そしてメゾンのファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントを務めるブルーノ・パブロフスキーは、カール・ラガーフェルドと ヴィルジニー・ヴィアールの指導の下で研鑽に励んだクリエイション スタジオのこれまでの功績と、メンバーたちの互いを高め合う姿勢を讃えた。

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