共同で築いてきたコレクションを「20エイジ・アーカイブ」と名付けると、二人は本格的なデジタルカタログと、メールによるニュースレターを立ち上げた。実は私も当時、インスタグラムでアピオラッザをフォローしていた。彼が紹介するアンティークな掘り出し物や、時折のぞかせる、仕事の舞台裏に魅せられていたのだ。このアカウントでシェアされているヴィンテージアイテムと、彼自身が生み出す作品の間にリンクがあるのでは? と考えることも多かった。この点について質問をぶつけると、こんな返事が返ってきた。「仕事柄、(インスタグラムで)見せるものには限度を設けようとしていたんです。でも、アーカイブ愛が強すぎて、自分を抑えきれませんでした」。さらに笑いながら、こう明かしてくれた。「僕たちがアーカイブピースに寄せる情熱が、僕の常識を上回っていたんでしょう」

Image may contain Couch Furniture Cushion Home Decor and Person

ジャンポール・ゴルチエ、1985年秋冬のドレス。

Photographed by Alex Huanfa ChengImage may contain Hardwood Wood Indoors Interior Design Floor Flooring Clothing Glove Blouse Child and Person

メゾン マルジェラ、2001年春夏、手袋を素材にしたベスト。

Photographed by Alex Huanfa ChengImage may contain Indoors Interior Design Appliance Device Electrical Device Refrigerator Cooktop Kitchen and Wood

ジャン=ポール・グードの「バイオリン・パンツ」。1989年7月14日に行われた、フランス革命200周年記念のパレード用に制作された。

Photographed by Alex Huanfa ChengImage may contain Box Cup Sink and Sink Faucet

ジュンヤ ワタナベ、1998年秋冬のドレス。

Photographed by Alex Huanfa Cheng

また、さらなるアイテムの買い取りを考えるときも、二人の判断基準のベースにあるのは常識ではなく、情熱だった。「過去のパズルを再構築するのは素敵なものですよ」と、90年代キッズを自認するベナセルは、その過程を詩的に表現する。「これまで買い集めたアイテムは、自分より長い時間を経ているものが大半です。私はそれほど長い日々を生きてこなかったので、さまざまな人から聞いた話を通じて、ものに秘められたストーリーを体験しているのです」

一方のアピオラッザは、1997年、コム デ ギャルソンの「ボディが先か、服が先か(Body Meets Dress, Dress Meets Body)」と題されたコレクションが世に出たとき、ロンドンにいた。そして今では、このコレクションで披露されたピースをいくつか所有している。「当時の自分には手の届かない存在でした。今ではいくつかのピースを手もとに置くことができるようになり……昔抱いていた憧れの感情が今になってまたよみがえり、そのアイテムを実人生で手もとに置けるなんて、胸がいっぱいになりますね」

Image may contain Tomi Joutsen Clothing Costume Person Face Head Photography Portrait Pants Footwear and Shoe

アードリアン・アピオラッザ(左)、コム デ ギャルソン オム プリュス、2020秋冬のアイテムを着用。ライアン・ベナセル(右)、イッセイ ミヤケのシャツの上に、ジャンポール・ゴルチエが1998年、舞台「ピノキオ」のためにデザインした衣装を重ねて。どちらも二人が所有するアーカイブ所蔵のピースを着用。

Photographed by Alex Huanfa ChengImage may contain Clothing Coat Wood Jacket Hardwood Glove Floor Flooring Accessories Glasses Box and Scissors

「ルイ・ヴィトン×村上隆」コレクションのトランク(写真上、ルイ・ヴィトン、2003年春夏)と、「ルイ・ヴィトン×スティーブン・スプラウス」コレクションのジャケット(中央、ルイ・ヴィトン、2001年春夏)、周囲を取りまく小物は複数のブランド。

Photographed by Alex Huanfa Cheng

二人はまた、アピオラッザが自身のキャリアの中で勤めてきたブランドのアイテムもコレクションに加えている。その中でも、モスキーノの創始者、フランシスコ・モスキーノのオリジナル・アイテムは、今になって特別な意味を持つに至った。「デザイナー就任が本当に急な話だったので(前任者が就任からわずか10日で急逝したことを受けての指名だった)、時間がない中で仕上げるためには、実作業に全振りして、リソースを投入する必要がありました」と、彼は就任後の慌ただしさを振り返る。

Leave A Reply