映画監督 前田哲/148

まえだ・てつ 大阪府出身。東映東京撮影所(東京・練馬区)の大道具のアルバイト、美術助手を経て、伊丹十三監督、滝田洋二郎監督、大森一樹監督、阪本順治監督、周防正行監督らの作品に携わり、1998年、相米慎二監督が総監督を務めた「ポッキー坂恋物語 かわいいひと」で劇場映画監督デビュー。近作に「そして、バトンは渡された」(2021年)、「老後の資金がありません!」(21年)、「ロストケア」(23年)、「水は海に向かって流れる」(23年)、「大名倒産」(23年)、「九十歳。何がめでたい」(24年)など。

 幼いころに父を失った兄と妹の物語を、原作小説を基にして新たに映画として完成させた。「普段使いの食器を目指している」という映画監督の前田哲さんの意図とは──。(聞き手=りんたいこ・ライター)

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── 4月25日に全国公開される映画「花まんま」は、2005年に直木賞を受賞した朱川湊人さんの同名短編小説集の表題作が原作です。原作では昭和30〜40年代の大阪の下町を舞台に、当時は子どもだった兄妹の不思議な出来事が語られますが、映画はその2人が大人になってからの物語が軸になっていますね。

前田 原作を読んだ時、とても映画的な物語だと思いました。愛する人を失った見ず知らずの人に会いに、兄と妹が冒険の旅に出る。まさにロードムービーです。原作では最後の数行に、「妹が明日、結婚する」と書いてありますが、僕は子どものころだけでなく、その後も彼らは交流を続けていたのではないかと思いました。

 毎年のように災害が起きていますが、災害に限らず、事故や病気で大切な人を亡くしている人が多くいます。朱川さんはその残された人たちの気持ちをおもんぱかってこの小説を書いたそうです。主人公の兄妹は早くに父を亡くし、まして妹は父の記憶がない。彼女の喪失感を埋めてくれ…



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週刊エコノミスト

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