K-POPに負けないオリジナル・ジャパニーズ・スタイルの追求

ーー特に直近ではKAWAII LAB.が絶好調で、本格的な海外進出も視野に入ってきていると思います。グローバルにヒットしているものと、日本でドメスティックに人気があるものは当然、違うわけですが、中川さんの中でそれをつなぐ線は見えているでしょうか。
中川:コロナ禍の期間に「K-POPはすごいな、やっぱり勝てないな」と思わされて、自分たちは何ができるかと考えた時に、行き着いたのがまさにオリジナル・ジャパニーズ・スタイルを追求するということでした。きゃりーぱみゅぱみゅも新しい学校のリーダーズもそうですが、海外でも関心が高い、日本のアニメのすごさ、かわいいものを探すすごさのようなものを体現できるのがアイドルなのではないかと。
また海外での展開でいえば、3月にロサンゼルスでAdo、YOASOBI、新しい学校のリーダーズが共演する『matsuri ’25: Japanese Music Experience LOS ANGELES』が開催されます。まさにオリジナル・ジャパニーズ・スタイルを体現する3組で、こうしたところからいずれはK-POPのように海外を席巻するようになればと。
ーーこれまでの“アイドル”はプロデューサーが全体像を構築し、その世界観で活動していくというイメージが大きかったように思いますが、KAWAII LAB.はCANDY TUNEもFRUITS ZIPPERも、メンバーから出てくる自発性を感じます。
中川:そうですね。自分たちで発信できる子たち、個性を持っている子たちをどうプロデュースするかーーそこで大事なのは、お仕着せの人形にしてしまうのではなく、自分たちで「着こなして」もらうことだと考えてきました。そのためには、当初にキーワードとして発信した“青文字系”もそうですが、原宿のストリートだったり、クラブカルチャーだったり、自分たちのルーツが非常に大切で。KAWAII LAB.のグループが今もアイドルイベントに出続ける理由も、そこから育ったからで、恩返しをしなければいけないということを常に考えています。クラブカルチャー出身の中田ヤスタカ、青文字・原宿から出てきたきゃりーぱみゅぱみゅの例を考えても、自熱の源泉になっているカルチャーを大切にしなければ自分たちも大きくなれない、ということです。
ーーそうして“ストーリー”をつなげていくことが重要だと。
中川:本当にそうで、雑な言い方ですが、僕はよく「ストーリーが見えないと売れない」と言っています。その子たちが本当に好きなものから、例えばKAWAII LAB.のコンセプトである「原宿から世界へ」のようなテーマが生まれていく。ただ売れそうだからやるのではなく、そうしたストーリーが明確にあって、アソビシステムがやる意味があることをやる、ということを大切にしています。
ーーKAWAII LAB.はストリーミングの再生数も含めて、ファンにダイレクトに届けるBtoCの動きが非常に大きいのが特徴的です。こちらもプロダクションの新しいあり方ですね。
中川:僕はもともとエンタメやテレビが好きで、そのすごさを肌で知っています。ミリオンヒットが連発していた当時の事務所やレーベルは楽しかっただろうと素直に思いますし、憧れもあって。「自分たちが今の時代にそれに近いことができるのか」という模索を続けているなかで、今のような形になっているということです。

ーー昭和から平成にかけて繁栄した芸能界や芸能プロダクションのよさというものもリスペクトした上で、チャレンジを続けていると。
中川:もちろんです。僕は高校生の時、GLAYの20万人ライブ(1999年・GLAY EXPO)の現場(幕張メッセ駐車場特設ステージ )やFUJI ROCK FESTIVALの駐車場でバイトをしていて、「こんなことが起こるんだ!」「エンタメってすごいんだな」と思った経験がありますから。
ーーBtoCという構図の中で、アソビシステムには音楽だけなく、幅広いジャンルのクリエイターが集まっていて、それぞれにお客さんがついていることが強みになっていますね。
中川:コロナ以前から、大きくなくてもファンがしっかりついているコミュニティをいくつも作ることが重要だと考えてきました。それぞれに違いはあれど、つながる部分もある。そういう柱がいくつも立っていれば、時に別々のコミュニティ同士が結びつき、大きなムーブメントになって、世界的なヒットにつながっていく。どこで火がつくかはわかりませんが、アソビシステムはそういうヒットを生み出さなければいけないと考えていて、だからこそ、それぞれのカルチャーに寄り添う気持ちを常に忘れないようにしています。
ーーKAWAII LAB.についてもうひとつ伺うと、アイドル業界にはメンバーがときに疲弊してしまったり、ファンとの関係性に悩むなど、運営上のさまざまな問題もあると思います。中川さんはこれについても、より健全でオープンなものにしていきたいと。
中川:大前提としてーーこれは当たり前のようで当たり前でなくなっていることですが、アイドル活動を楽しくて幸せなことにしていかなければならないと思っています。そのためにはスタッフ一人ひとりがしっかり向き合うことが大事で、同時に、売れる時は運だし、タイミングだし、「自分たちのおかげで売れた」わけではないのだと常に言い聞かせるようにしていて。
ーー傲慢になってはいけないと。
中川:そうです。僕自身が大事にしているのは、とにかく現場を見ること。「どこの現場にもいますね」とよく言われますが、やっぱりライブやテレビ収録を見ながら考えることが多く、アイドルを取り巻く環境をしっかり見ていくことが重要だと思っています。特にライブではお客さんをよくし観察ていて、「ああ、こういう人が来ているんだ」「こんな笑顔で見ているんだ」と。気づいたことがあればすぐにフィードバックするので、みんな「突然LINEが飛んでくる」と思っているでしょうね(笑)。
