アニー(マイキー・マディソン)は、イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と彼の友人たちとともにパーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごし、“契約”の最後に訪れたラスベガスで結婚する。

アニー(マイキー・マディソン)は、イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と彼の友人たちとともにパーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごし、“契約”の最後に訪れたラスベガスで結婚する。

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こうしたベイカーの方向性が最大限に発揮されたのが『ANORA アノーラ』で、セックスワーカーとして、あるいは女性として差別や屈辱も味わってきたであろうアノーラが、男たちからの理不尽な攻撃にもへこたれず対抗し、自身の生き方を肯定しようとする姿は、ベイカーの映画作家としての生き方も重なる。

前作『レッド・ロケット』の元ポルノ男優と同じく、本作のアノーラも、その言動には自己中心的で強引な部分もあり、最初は共感しづらいキャラクターかもしれない。そんな彼女が、観ているうちにどんどん愛おしくなっていく“映画のマジック”もベイカーの真骨頂で、このマジックが『レッド・ロケット』以上に効果を発揮したのも、『ANORA アノーラ』を多くの人が賞賛するポイントだろう。

こうした周縁化された人々への温かい眼差しは、トランプ政権となったことでより分断が進むアメリカ社会、いや国際社会への警鐘とも捉えることができ、まさに現在にふさわしいテーマだ。『ANORA アノーラ』には移民のトピックも込められており、その意義を多くのアカデミー会員が無意識に感じたのは間違いない。

幸せなシンデレラストーリーの渦中にいたアニーとイヴァンだが、彼の両親に結婚を知られて厳しい現実に引き戻される。

幸せなシンデレラストーリーの渦中にいたアニーとイヴァンだが、彼の両親に結婚を知られて厳しい現実に引き戻される。

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