第67回グラミー賞でのチャペル・ローン。纏っているのはトム ブラウンのガウン。
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レッドカーペットにはジャンポール・ゴルチエのドレスで登場。
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受賞スピーチの際に着用していたのは、アクネ ストゥディオズの1枚。
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その一方で、授賞式において衣装チェンジは一種のストーリーテリングになる。今年のグラミー賞で最優秀新人賞にノミネートされたドーチーとチャペル・ローンなどは、ファッションを最大限活用し、新人とは思えない存在感をアワードで放った。ステージ衣装のほかに、同賞を受賞したローンはジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)のクチュールガウンやトム ブラウン(THOM BROWNE)によるカスタムルックに身を包み、ドーチーはトム ブラウンによる4つのカスタム衣装をパフォーマンスでもレッドカーペットで着こなした。
だが、一夜だけで複数回も衣装を替えるのは、いささか多いように思える。彼女たちが着用するようなルックは製作にも調達にも多大な労力を要し、たった数分だけ日の目を見るにはあまりにももったいない。その上、ルックの数が多ければ多いほど、1着あたりのインパクトは薄れてしまう。
第67回グラミー賞でのドーチー。この日のルックはすべてトム ブラウンによるもの。
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受賞スピーチもカスタムのトム ブラウンのルックで。
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受賞後はバブルスカートが印象的なピースにチェンジ。
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しかし、これはファッション業界に限った現象ではない。現代社会は常に「新しさ」を求めていて、刺激に貪欲だ。だが、絶え間なく変化し続けることは、環境、労働力、そして時間の面でも無理がある。スタイリストやセレブへの負担を減らし、「量より質」を重んじたファッションを推進するためにも、1つのルックにおさめる方が賢明ではないのか。素晴らしいルックが1つあれば、十分人びとの心に残るのだから。