2025年春のトレンドは何といっても小物、小物、小物! これほどファッション小物の話題が盛んなのは、“Itバッグ”や“ウェイティングリスト”といった言葉が騒がれた2000年代以来初めてかもしれない。昨年に続くバッグチャームの流行は「フェンディ」や「ステラ マッカートニー」のランウェイまで波及し、装飾付きのスニーカーやスマホケースも登場。「コーチ」の巨大なテディベア型のクラッチバッグや「トリーバーチ」のピアス付きバッグ&シューズなど個性的なアイテムがSNSで話題を呼んでいる。さらにはカラフルなレッグウエアや精巧なヘッドピースなど、今季予想外のヒットを飛ばしたカテゴリーにも注目したい。ここでは、US版『ELLE』のチームが協力して、今春の小物トレンドをキーワード別にレクチャー。大物ウェアと違い、すぐに試せるのが小物の良いところ。春のおしゃれに早速取り入れてみて。
1.「レッグウエア」全盛LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
「バレンシアガ」2025春夏コレクション
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「プラダ」2025春夏コレクション
ストリートスナップの人気者たちが履いている赤いタイツから「360」のMVでチャーリー・XCXがワインをこぼしていたヌーディーなストッキングまで、スタイルに関係なくレッグウエアはもはや外せないアイテムに。2025年春夏、「ヴァレンティノ」と「シャネル」はレース柄のタイツやハイソックスを発表。「バレンシアガ」と「ドルチェ & ガッバーナ」はセクシーで挑発的なガーターストッキングを、「プラダ」は多色の厚手のリブタイツを提案している。
「かつては前衛的なランウェイでしか見られなかったような個性的なレッグウェアが、今では日常スタイルに浸透しています」と、リニューアルを果たした創業55年の老舗レッグウエアブランド「L’eggs」のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、カミ・テレスは述べる。同ブランドの顧客調査データによると、女性の45%が今年は色や柄のタイツをもっと着用したいと答えているという。テレスはそれを「レッグウェア界の赤いリップスティック」と呼ぶ。ビヨンセの御用達ブランド「d.bleu.dazzled」のブランド創設者デスティニー・ブルーも次のように語っている。「タイツはまつ毛のようなもの。ルックを少しだけ手間をかけたように見せてくれます」—マディソン・レックスロート、US版『ELLE』アクセサリーエディター
Related Story2.バッグもシューズも「チャーム」でデコるLAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
「フェンディ」2025春夏コレクション
バッグをチャームで飾り立てるトレンドが席巻している。「フェンディ」、「コーチ」、「ステラ マッカートニー」はこの春のトレンドにあわせて、さまざまなチャームやミニバッグ・オン・バッグを発表。「“超個性化”はSNSフィードをにぎやかにするのに最適です」と、「モーダ・オペランティ」の非アパレルおよび高級ジュエリー部門のディレクター、ライアン・クレマンは述べる。「インターネットがファッションを支配する前は、これらが会話のきっかけの役割を果たしていました」。彼はジェーン・バーキンのチャームで覆われた、彼女の名前を冠した「エルメス」のバッグの例を挙げ、このトレンドが一過性のものではないと指摘している。
Edward Berthelot//Getty Images
アクセサリーブランド「BONBONWHIMS」の創設者でデザイナーのクレア・ガイ=ハワードは最近、自身のブランドや旅行先で買ったチャーム、チェーンで飾った「ルイ・ヴィトン」のバッグをインスタグラムに投稿して話題を呼んだ。彼女はこれを「過去のファッショントレンドを再訪したいという集団的欲求」だとしている。「香港で育った私にとって、折りたたみ式携帯電話のケースを自分好みにカスタマイズしたり、学校のリュックサックにキーホルダーや『たまごっち』を重ねたりするのは当然のことでした」。今日では、帽子からヘアクリップまであらゆるものが自分好みにカスタマイズできるキャンバスだ。
「ゴールデン グース」のアメリカにおける最高経営責任者であるシルビア・メラティは、「消費者は個性を常に求めています」と指摘する。同ブランドは、バッグやスニーカーにぜいたくなカスタマイズを施せる“Co-Creation(共同創作)”サービスを導入し、消費者がデザインプロセスに共感できるようにしている。モノグラムや誕生石、星座、装飾の組み合わせは無限大。誰ともかぶらないスタイルが追求できる。—マディソン・レックスロート、US版『ELLE』アクセサリーエディター
Related Story3.斬新で奇抜Courtesy of the designer.
「ボッテガ・ヴェネタ」2025年春夏には遊び心あふれるハンドバッグが多数登場。
最近のファッションでは新奇さが求められている。2025年春夏のランウェイでは「コーチ」の巨大なテディベア型のクラッチバッグから「トリーバーチ」のピアス付きバッグ&シューズまで、斬新で奇抜なアクセサリーが大量に登場した。メルマガ配信プラットフォーム、Substackでニュースレター「The Molehill」を執筆しているヴィヴ・チェンによると、この不条理なトレンドは独自性を求める人々の欲求の高まりを表しているという。「マイクロトレンドの流入とオンラインでのスタイルの均質化により、目立つことがますます難しくなっています」と彼女。
ユニークなアイテムは会話のきっかけにもなる。「実物大のぬいぐるみの犬のバッグを持って出たら、声をかけられるのは必至です」とチェン。果たして、それには風刺的な意味が込められているのか。それともデジタルネイティブ世代の社会的つえとなっているのか。あるいは単に面白がっているだけか。いずれにせよそれは動物の形をしたバッグなのだから、解釈はあなた次第だ。—メグ・ドノヒュー、US版『ELLE』アソシエイト・ファッション・コマース・エディター
4.「ダブルバッグ」の誘惑LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
「ボッテガ・ヴェネタ」2025年春夏のランウェイでは買い物袋風バッグとハンドバッグを2個持ち。
バッグを2つ持てるのに、なぜ1つだけ? 「ボッテガ・ヴェネタ」の高級ハンドバッグとショッピングバッグを組み合わせたハイファッションなアプローチから、「シャネル」や「ステラ マッカートニー」の大きなバッグに小さなハンドバッグを取り付けたスタイルまで、今シーズンのシティーガールファッションではマルチタスクがテーマだ。
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「ステラ マッカートニー」2025年春夏に登場したミニバッグ・オン・バッグ。
デジタルプラットフォームとインスタグラムアカウント「Data, But Make It Fashion」を運営するマデ・ラプエルタは、このトレンドはスタイルを試す手軽な方法としておすすめだという。「トレンドサイクルがかつてないほど速く変化する中、常に新製品を購入しなければならないという感覚にうんざりしている人々の共感を呼んでいます」と彼女。「彼らは新製品を求める代わりに、自分が持ってる古い『バレンシアガ』の“シティ”と『モワナ』のミニバッグを2個持ちしてみたらどんな感じだろう……?と考えるわけです」
ラプエルタはこのトレンドは小型のミニバッグだけを持つよりも機能性が高いため、高級ファッションに投資したい人にとってはまたとないエントリーの機会だと説明する。「バッグに何千ドルも使う余裕はないかもしれません。ですが小型のアイテムを購入して、すでに持っているトートバッグと組み合わせることでラグジュアリーを実践できます」—デール・アーデン・チョン、US版『ELLE』シニア・ファッション・コマース・エディター
5.「ヘッドピース」に夢中!Courtesy of the designer.
「プラダ」2025年春夏の個性的なヘッドピース。
ミニマリズムやクワイエットラグジュアリーと別れを告げる時がきた。「ボッテガ・ヴェネタ」、「プラダ」、「マックイーン」は2025年春夏コレクションで、大胆なアクセサリーが席巻する未来をうかがわせるかのように、ランウェイでヘッドウェアを多用した。ダイヤモンドやフリンジ、遊び心のあるモチーフで飾られたこれらのアイテムは、あたかも着用可能な彫刻のようで、スタイリングに前衛的なアプローチを付け加えている。
WWD//Getty Images
「マックィーン」2025春夏コレクション
プラダの共同クリエイティブディレクターであるミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは、まるで宇宙飛行士の服のように見える円形の切り抜きが施されたレザーのゴーグルハットと、目の上まで垂れ下がるラフィアのフリンジヘッドピースを発表した。そして「マックイーン」2年目となるショーン・マクギアーは、機能的でありながら最高にぜいたくな、ニットのスカルマスクを提案。特に魅力的なバージョンではクリスタルの装飾とチェーンが腰まで伸びたデザインが人々の目を引きつけた。
ソーシャルメディア上で個性やパーソナルスタイルに関する会話が渦巻く中、作家でファッション理論家のリアン・フィンは、これらのヘッドピースは、単に流行を追うのではなく、派手なアクセサリーを通じて個性を表現するための新たなロードマップを提供すると指摘する。「ボッテガ・ヴェネタ」の製品はその完璧な例であり、当時のデザイナー、マチュー・ブレイジーは、ドレスアップを楽しむという若々しいアイデアをレザー製のウィッグでラグジュアリーに変貌させた。細長い髪の毛のような形にカットされたレザーの細片は、モデルがランウェイを歩くとリズミカルに揺れ動く。
このような作品を見ると、ファッションは楽しいだけでなく、面白いものだということが実感できる。これらは、「ファッションの未来は予測不可能で、楽しく、気まぐれであるべき」ということを示しているとクリエイティブコンサルタントでファッション理論家のアシャンティ・オースティンは言う。デザイナーたちは、私たちにもっと気楽に構えるように促しているのだ。—ターシャ・ニコル・スミス、US版『ELLE』ビューティーアシスタント
6.「アーカイブ」再訪LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
’60年代のアーカイブプリントをあしらった2025年春夏の「グッチ」のハンドバッグ。
サンプルセールで自分の手の指をすり抜けてしまった「ザ・ロウ」の“マルゴー”バッグ、購入チャンスを完全に逸してしまった「プロエンザ スクーラー」と「ソレル」のコラボシューズ。今日では元カレ同様、長い間忘れていたファッションアイテムはインスタグラムのフィードにふいに現れる。そして、高級ブランド品の中古市場のおかげで、再会はクリックひとつで可能になった。
さらには、ヘリテージファッションやヴィンテージファッションへの関心が高まる中、多くのデザイナーがアーカイブを再訪し、(時にはそれほど遠くない)過去のヒット作の新たなバージョンを生み出す流れも起きている。「プラダ」の2025年春夏コレクションでは、1999年春夏のスプリットソールのローファーから2024年春夏のポインテッドヒールまで、すべてが装い新たに再登場。「グッチ」では、前クリエイティブ・ディレクターのサバト・デ・サルノが、オレンジとシャルトリューズの鮮やかな色合いで、’60年代プリントをハンドバッグや帽子に復活させた。また、「ルイ・ヴィトン」のニコラ・ジェスキエールは、1997年の旅行ルックをベースにした新たな“グリニッジ”バッグのためにブランドのアーカイブを徹底的に調査。そして「ヴァレンティノ」の華々しいデビューコレクションでアレッサンドロ・ミケーレはポルカドットのルックを含む、メゾンの’60~’80年代のアーカイブを参照した。そう、過去のファッションは決して廃れることなく、常に新しい形でよみがえるのだ。—ヴェロニク・ハイランド、US版『ELLE』ファッション・フィーチャー・エディター
Translation & Text : Naoko Ogata
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