ティルダの俳優人生はデレク・ジャーマンの映画『カラヴァッジオ』から始まったという。この出演をきっかけに、彼女はジャーマン作品においてミューズとなり、彼と7本の作品を作り上げた。だが、ジャーマンが1994年にエイズでこの世を去ると、心にぽっかり穴が開いてしまったというティルダは、もう演技は続けられないとまで思ったことを吐露した。「神様がジャーマンと出会わせてくれなかったら、たぶんあんなふうに映画に熱狂することはなかったと思います。彼と仕事できたことは奇跡としか言いようがありません」と彼女は語った。
ジャーマンとの共作もまた、彼女に映画の本質を理解させてくれた。すなわち、大衆の力が集結して完成したアート作品である。「つねに自分は監督であると思っているし、その思いは一度も変わったことはありません。映画を撮り続けられているのは、ジャーマンと仕事をともにしたことの影響が大きいです。彼はグループ創作で有名な監督なんです。1985年に初めて彼と仕事をしたときには、多くの出会いに恵まれ、今でも親しくしている友人が多数います」
『カラヴァッジオ』の衣装デザイナーのサンディー・パウエルや作曲家のサイモン・フィッシャー・ターナーはみな、彼女が映画に触れた初期に知り合った大切な友人たちだ。「あのときの私たちはまだ若くて、ジャーマンがいかにして自分の作品に責任を持つべきかというノウハウを教えてくれ、ともに責任を負う方法も教わりました。さらには、ある程度は映画の製作権を共有することも。だから思うんです。映画監督は彼ですが、私たち一人一人も映画を製作する人なんだって」
「私自身が映画監督になる気があるのかについては、自分の中でもいまだに答えが出ていません」。ティルダは今のところショートフィルムを一本撮っただけで、あとは デレク・ジャーマン・ラボと共同で映画を製作したことがある。ラボとは最近ある散 文映画を完成させたばかりで、シリーズ化された散文映画の中の一章だ。「どんなこともぜったい起こらないということはないと思うんです。他の人とともに製作するのは楽しいです。特別に一人で映画を進める予定の有無については、まだわかりません。でも、今はこのすべての過程を満喫しています」
自分を「俳優」だと見なしたことはない
