写真家のベンジャミン・バロンが、大学最後の年に友人とアメリカで創刊した雑誌『ALL–IN』。そのローンチパーティで出会ったベンジャミンとデザイナーのブロール・オーガストの2人は、雑誌の撮影用にヴィンテージ服を再利用したコレクションを製作した。「当初は、ブランドを立ち上げるという明確な考えはなかった」が、友人のマリアム・ナシール・ザデーの目に留まり、彼女は自身のショップで販売したいと申し出た。その後、5ヶ月かけて新たなピースを制作し、マリアムのニューヨーク店でランウェイ形式で発表。こうしてファッションブランド、オールイン(ALL–IN)が誕生した。コレクションはショーの後そのままショップで販売され、最初に購入したのは、なんとスタイリストのロッタ・ヴォルコヴァだったという。
その後、オーガストのアーティスト・レジデンシーのために、2人はパリに5ヶ月間滞在することに。ちょうどオールインのセカンド・コレクションを完成させたばかりの2人の頭には、パリでランウェイショーを行うという大胆なアイデアが浮かんでいた。ファッションウィークまであと3週間しかなかったが、プロデューサーのゾーイ・マーティンの協力を得て、クレイジーなアイデアだと知りつつも、彼らはそれを実行に移した。ショーを通じて多くの人々と出会い、「もっとパリにいたいと思わせる経験だった」と2人は口を揃え、パリへの完全な移住を決意した。
既存の服を解体・再構築・再解釈するブリコラージュのようなアプローチが、彼らのデザインの最大の特徴であり、彼らはこれを「リコンテクスチュアライジング(再文脈化)」と呼んでいる。古着を使ったアイテムは今でもコレクションの半分を占めるが、それでもブランドは「サステナビリティ」という言葉には慎重だ。それはマーケティングの手段として過剰に使われてきたワードであり、過剰消費を正当化し、ショッピングそのものを倫理的と誤解させる恐れがあるからだ。最大の問題は、過剰生産と過剰消費を助長する流れにあると指摘し、価値のあるものを適切な量だけ生産し、消費を急かさないことが大切だと説く。例えば、卸や販売店と協力して、セールのサイクルを遅らせるなど。「発売から2か月後にセール価格になるようであれば、まるで価値がないみたいですよね」とベンジャミン。「すぐに消費されて飽きられるのではなく、じっくりと燃えるようなものにしたいのです」