この日、ランウェイにはレッドカーペットが敷かれており、登場口にはベルベットのカーテンがかかっていた。そしてカーテンが開くと、ドルチェ&ガッバーナの黒いタキシードという、一分の隙もない服装をしたパパラッチの群衆が出現。プライベートの日常から、仕事の一環として行うプレスツアーや出席するレッドカーペットイベントまで、いつ何時も、カメラマンの容赦ない視線にさらされるセレブたちの現実を思い知らされる演出だ。そのすべての場面に見合う、一貫したコレクションをメゾンは今回打ち出した。魅惑的でありながら、少しクセのある軽やさのピースが揃うラインナップに、セレブが惹かれるのも当然だろう。
ここ数シーズンのテーラード重視のコレクションから一転、ステファノとドメニコは今回、1960年代のイタリアを象徴する「ドルチェ・ヴィータ(本能のままに自由に遊び暮らす生活)」のライフスタイルのような、自信と余裕に満ちた、どこか平然とした空気感を取り入れた。どんなにカジュアルなピースにも、古き良き時代のエレガンスと、イタリアを代表する伊達男のマルチェロ・マストロヤンニに通ずる魅力が漂う。序盤に披露されたのは、レイヤードを駆使したゆったりとしたデイウェア。柔らかなウォッシュドデニムにボリューム感あるフェイクファーのコートやトリミングを合わせ、ユーティリティを豪華さを息づかせた。そこからコレクションは徐々にフォーマルなスタイルへと変化し、ツイードスーツや変幻自在な細身のコートなど、完璧な仕立てとリラックスムードを両立させたピースが登場。
Photo: Isidore Montag / Gorunway.com