コレクションをあと2つくらいは優に生み出せるほどアイデアに富んだショーは、朝から夜、暮れゆく1日を表した一連の流れとして展開。サヴィル・ロウで最も古いテーラー、デイヴィス&サン(DAVIES & SON)と共同で製作したブラックのモーニングスーツ、制服風の青いダブルブレストブレザー、テールコートといったセッチュウらしいルックの数々が随所に登場した。精巧に仕立てられたフォーマルなスーツは、プレスされたフロントプリーツによってコンパクトに畳むことができ、背中の裏地に縫い付けられたボタンをはめれば、ジャケットはクロップド丈に変身する。ゴールドのボタンがあしらわれたブルーのブレザーは、折り返されたタック入りのサイドが特徴で、テールコートはテールをたくし上げて再解釈。これを畳のような肌触りのコットンで作られた、袴を彷彿とさせるフリンジ付きのケープレットと合わせた。
Photo: Pietro D’Aprano/Getty Images
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ショーで披露された特徴的な白とグレーと黒のタータン柄は、白黒テレビや新聞、本など、情報がまだモノクロのメディアを介して発信されていた時代に思いを馳せてデザインされたものだ。「本は“見つける”ものではなく、“出会う”ものでした。その出会いはときに、かけがいのないものでした」と桑田が語るように、昔は1冊の本や1枚の新聞が人生を変えることがあった。日本ではタータンに似た柄が着物に使用されており、桑田自身が子ども時代、服作りを始めたばかりの頃に購入した生地のひとつもまたタータンだった。「(あの頃は)パンクが何なのかも知りませんでした」
Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com