アイドルのドキュメンタリーではなく、ひとりのクリエイターの軌跡
輝かしいグローバル・スターとして活躍するBTSのリーダー、RMのドキュメンタリー映画『RM:Right People, Wrong Place』が韓国で公開され、話題を集めている。2024年5月にリリースされた、彼の2枚目のソロアルバム「Right Place, Wrong Person」の制作過程を、8か月間、密度濃く追い続けた作品だ。
「Right Place, Wrong Person」は、米ローリングストーン誌が選ぶ、2024年の年間ベストアルバムTOP100に選ばれたことからも分かるように、RMの豊かな音楽の引き出しに驚かされた素晴らしいアルバムだったが、本作ではその才能を耳からだけではなく目視できる映像作品となっている。
アルバムのタイトルの意味するところは「その場所に似合わない異邦人」。周りとうまく馴染めず、生きづらい感情を多くの人が抱くが、広く世界的名声を得たRMも、自身にはどこかアウトサイダーな面があると感じ、葛藤してきたことを映画内で語っている。
「僕の人生には、いろいろなことが起こって、(強そうに見えて)そのたびに一喜一憂している自分がいる。昔から人の気持ちに敏感すぎて、言いたいことが言えないところもあります」と明かす。
28歳の青年のみずみずしい8ヶ月
デビューして10年余が過ぎた今、ひとつの端境期ともいえるこの時に、今回の映画で正直な気持ちをさらけ出せたのは、幸運な巡りあわせだったといえるのかもしれない。自分の人生に深く潜り込むことで、答えを見い出そうともがく姿には、堂々とグループを率いるリーダーだけではない、ひとりのアーティスト、生身の人間としての正直さ、素朴さ、とまどいが隠すことなく映し出されている。