さりげない着崩しと色彩が光る2025年春夏コレクション。
毎シーズンを一歩ずつ、着実に積み重ね、分岐点となったのは2023年6月。栗野も「フィナーレが忘れられない。パリの街並みにオーラリーの服を着たモデルたちが溶け込み、リアリティを帯びていた」と評する2024年春夏コレクション。パリの街に面したランウェイを歩いたモデルたちが、ショーの後、パリのストリートに一斉に並んだ。
「『パーソナルな癖』がシーズンのテーマ。すれ違う人のシャツに変な皺が入っていたり、袖や裾の捲り方が変わっていたり、そういうイメージだったので、偶然後ろを通る人や自転車、車も含めて、パリの街を会場として捉えたら面白いんじゃないかと思ったんです」
偶然と同居させることで生まれる、限りなく日常に近いプレゼンテーション。そこに計算や狙いはなく、オーラリーというブランドの姿勢にも重なる「らしさがあった」と栗野は言う。
「本当にいいものを丁寧につくり、質のいい自然体の服をつくることが、立ち上げた当初からコンセプト。ものづくりをするからには売れ残りたくはないし、セールになって欲しくない。僕自身、規模を広げたり、売り上げを伸ばすというヴィジョンはあまりなくて、それよりも服づくりやブランドイメージの質を高めていきたいし、毎シーズンやるからには、前シーズンより少しでもいいものになるように、一歩ずつ成長してアップデートしていきたい。無理せず自分たちが見える範囲で、身の丈に合ったバランスを求めていきたい」