アンダーカバーが考え続ける日常
近年のアンダーカバーにおいて、「日常」がクリエイティブのキーワードであり続けているのは、高橋自身のライフスタイルの変化にも起因している。コロナ禍を機に、高橋は神奈川県の葉山に新しくアトリエを構え、そこで多くの時間をひっそりと過ごすようになった。高橋が言うように、「騒がしく慌ただしい都会や社交の場を離れ、より個人的でくつろいだ日常の方向に向かっている」のだ。かつては街から得ていたインスピレーションは、豊かな自然、ゆったりと過ぎ去る時間、ときには空想に耽り、そして自分自身と深く向き合うことから得るようになった。多くのことに囚われすぎず、日常の些細なことに集中し、楽しむ。それは決して隠居めいた話ではなく、とても刺激的なことだ。
コレクションのテーマについて、「フェティッシュは、個人の隠された趣味嗜好の要素ですが、逆に言えば日常の一部でもあります。その隠された部分を表に出してみたいという思いで取り入れてみました」と高橋は言う。そう、日常とは、誰にとっても平穏なものであるとは限らない。ドーバーの地下は、このテーマにぴったりの場所だった。小さな地下室は、隠されていた日常が暴かれる場所なのだ。往年の映画では、そういった秘密の場所は地下室にあるのが鉄板だ。
今回のプレゼンテーションは、ファッションウィーク公式スケジュールの午前中の最初の枠だったが、大勢のゲストが来場しスペースはすぐにいっぱいになった。大物ジャーナリストたちも朝から欠かさず出席し、このブランドがパリにしっかりと根付き、そしていつまでも見逃せない存在であることが、改めて確認された。パリ・ファッションウィーク初参加から20年以上経った今でも、アンダーカバーのダークファンタジーは世界を魅了し続けている。
