このとき、アルバム『4』のレコーディング前で活動休止中だったビヨンセは、シルバーのジャカードドレスを纏い100人以上のエディターたちの前に登場した。後に「ニューヨーク・タイムズ」紙がショーへの出演を考え直したかどうか尋ねたところ、彼女は迷いなくこう答えている。「まさか! こんなに素晴らしい服を着られるんですから」
4. シャネル 2017-18年秋冬コレクション
シャネル 2017-18年秋冬コレクションより。
Photo: Catwalking
カール・ラガーフェルドはシャネル(CHANEL)のコレクションを発表する際、グラン・パレのなかにひとつの世界を作り上げるのがお決まりだった。例えば、2014-15年秋冬のマルシェ。棚にジャンボンにツナ缶、そしてケチャップなどを並べた演出を覚えている人は多いだろう。本エキシビションで『VOGUE』が注目したのは、2017-18年秋冬の「No.5 Launch Pad」。エルトン・ジョンの「ロケットマン」が流れるなか、高さ35メートルのロケットがグラン・パレの天井に向かって「発射」されたショーだ。
NASAが「TRAPPIST-1b」のまわりに3つの惑星を発見したと発表したわずか数週間後に行われたショーについて、「これは数カ月前に思いついたことなのですが、突然みんながやるようになったのです」とラガーフェルドは語っていた。コレクションにはエマージェンシーブランケットや宇宙服の襟、ソーラーツイードやロケットの機体を想起させるミノディエールなどが登場。ラガーフェルドは後に、ショーまでの数カ月間、国際宇宙ステーションから定期的に発信していたフランス人宇宙飛行士トマ・ペスケからインスピレーションを得たと明かしている。
5. バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクション
バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクションより。
Photo: Estrop
バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクションより。
バレンシアガ(BALENCIAGA)2020-21年秋冬コレクションの舞台となったのは、サン・ドニにある映画撮影スタジオ「シテ・デュ・シネマ」。ランウェイにしかれた水はフロントローにも流れ込み、ユニフォームシャツや5本指のシューズ、ネオゴシック調のパワースーツやウェリントンブーツをスタイリングしたモデルたちが歩くたび、エディターたちに水しぶきがかかった。一方、LEDスクリーンが設置された天井には気候危機を暗示する映像が渦巻くように映し出され、不穏な空気を演出した。