SHEINの広報担当者は、環境問題などの情報を発信する非営利メディア『Grist』に宛てたメールの声明のなかで、テクノロジーにより自社の繊維廃棄物が削減され効率性が高まっているというピーター・パルノ=デイの主張を繰り返し、23年のCO2排出量が増加したのは、事業が大変好調だったためと説明した。同広報担当者は「弊社は、会社が成長することが持続可能性を阻害するとは考えていません」と述べている。

    問題は、独特のビジネスモデルにある

    ファッションビジネス専門誌『the Business of Fashion』がSHEINの持続可能性報告書を分析したところ、昨年、SHEINの排出量増加率は収益増加率のほぼ2倍だったことがわかり、同社はファッション業界で最も排出量過多な企業となった。それに比べて、ZARAのCO2排出量は収益の半分の増加率にとどまった。H&Mやナイキといったほかの業界大手は、収益を伸ばす一方で排出量は前年度よりも低減させている。

    SHEINの排出量が特に多いのは、商品の発送を航空輸送に大きく依存しているからだと、米デラウェア大学のファッション・アパレル研究学科教授シェン・ルーは言う。「AIはファッション業界で広く活用されています。AIを使うことが必ずしも悪いわけではありません。問題は、SHEINの独特なビジネスモデルの本質にあるのです」

    他の大手ブランドは、商品を海外へ一度に大量に海上輸送している。船便のほうが輸送コストを低く抑えられるからだ。そして、多数の国にサプライヤーと倉庫を確保して、商品が消費者へ届くまでの移動距離を短縮している。

    SHEINの持続可能性報告書によれば、同社のカーボンフットプリントの38%は、工場など施設間、および顧客への輸送によるもので、さらに61%はサプライチェーンのほかの部分が占めている。会社はシンガポールを拠点とし、複数の国にサプライヤーをもつものの、販売する衣料品のほとんどは中国で生産され、そこから個々の顧客の住所宛に小包で空輸されている。7月中、SHEINは毎日約90万個もの荷物を米国に発送した。

    2023年11月のブラックフライデーにスペインのバルセロナで抗議デモを行なう活動家グループ。

    2023年11月のブラックフライデーにスペインのバルセロナで抗議デモを行なう活動家グループ。

    Photograph: NurPhoto/Getty Images via Grist

    同社の広報担当者は『Grist』に対し、会社はサプライチェーンのフットプリントを改善するため脱炭酸化ロードマップを策定しているところだと語っている。近頃は、米国内の倉庫に保管する在庫量を増やすことで同国の顧客への配送時間を短縮し、航空貨物機よりも炭素効率のいい貨物船の利用を増やしているという。

    ルーは、「ファッション業界にとって、二酸化炭素排出量の抑制は容易なことではありません。非常に複雑なプロセスを要するのです」と話し、多くのブランドが業務の効率化にAIを活用していると付け加えた。「AIは、使い方次第だと思うのです」

    ある研究は、特定のAI技術を活用することで、企業の持続可能性が向上する可能性があることを見出した。「それこそが、欠けている部分です」と、オーストラリアのウーロンゴン大学でビジネス・法律学部の副学部長を務めるシャリアー・アクターは言う。5月、アクターと彼の同僚は、ファストファッションのサプライヤーがAIデータ管理ソフトウェアを使用して大手ブランドの持続可能性目標に準拠した際、それらのブランドの収益性は増し、CO2排出量は減ったという研究結果を発表した。アクターによれば、AIテクノロジーの最も効果的な用途は、大気汚染や排出量といった環境への影響を注意深くモニタリングすることだという。「このようなトラッキング(環境への影響追跡)は、AIベースのツールが登場する以前は不可能でした」

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