そんな彼女は、アメリカのメディアにおけるアジア系の表現及び扱いに関して声をあげ、活動家として映画業界の多様性推進に尽力してきた。そして、自身の成功こそが業界の扉を開くと信じた彼女は、自らが体験した配役上の人種差別をSNSで共有する活動を展開。そんな彼女に賛同した他のアジア系アメリカ人の活動家とともに起こした「#StarringConstanceWu」運動は、ジェマ・チャンやオークワフィナことノーラ・ラムら多数のアジア系俳優に主演の機会をもたらしたとも評価されている。

「自分の労働環境を変えるには、まず今の自分が利用できるリソースを把握して、足場を固めなければなりません。その上で声を挙げることが、根本的に事態を変えることにつながるのです」

士郎正宗の漫画をベースにした映画『GHOST IN THE SHELL』(2017)で、パラマウント社が スカーレット・ヨハンソンのルックをCGIでアジア風のルックに寄せたときは「典型的なブラックフェイス(黒人以外俳優が黒人を演じるための扮装のこと)」と指摘。マット・デイモンが中国を舞台にした映画『グレートウォール』(2016)の主演に抜擢されたときは「白人男性だけが世界を救えるという人種差別的な神話の繰り返し」と非難するなど、人種表現を含むあらゆる差別に対し声をあげ、同胞の労働環境改善に努めてきたウー。だが、意外なことに当初はアジア系女性として代弁者になるつもりは全くなく、むしろ差別などに関して深く考えたことはなかったと、「ガーディアン」紙に明かす。

「私は昔から率直な物言いをするタイプで、とても衝動的ですぐに反応することはありましたが、何かを変えようと積極的に思ったことはありませんでした。そんな私が、俳優として成功して偶然にも“名声”というものを手に入れました──それを探していたわけでも、求めていたわけでもなかったのに。でもいったん手に入れたのなら、それを何か良いことに使ったほうがいいでしょう? だから私にできる最善のことは、なかなか声が挙げられない人を手助けをすること。そのために私は活動家になったのです」

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