それはつまり、富裕層の人々ということだろうか。

「わたしたちが長期的に目指すのは、誰もが宇宙を体験できる未来です」とコーは反論する。

「もちろん、初めに宇宙に出かける人は、その体験に見合う対価を支払う必要があるでしょう。“売り出し初日の値札”には、たいていの人には手の届かない金額が書いてあるはずです。しかし、時間とともに地球低軌道へのHaven-1打ち上げ費用は安くなり、宇宙への道は徐々に開けていくに違いありません」

地球を眺められる大きな窓

平均10日間となる予定のこの宇宙旅行には、1回につき4つの座席が用意されている。そのうちのひとつを確保した客は、安全のための訓練を義務付けられるが、操縦や行程の管理といった任務を負うことはない。

代わりに彼らに与えられる最大の任務は、ひたすら船外の景色に見入ることだ。Haven-1自慢の大きな中央窓からは地球がよく見えるだろう。

Vastは声明の中で、「Haven-1にはぬくもりと親しみを感じさせる内装が施されています」との説明に加え、その美的感覚にあふれた設計は、アップルの代表的な製品をいくつも手がけたデザイナーのピーター・ラッセル=クラークの主導によって実現したと述べている。

声明には「人間を主軸に置いて設計されたHaven-1の工業デザインは、大胆な独創性と効率性の両立という新たな次元を取り入れ、宇宙における内装デザインにまったく新しい基準を生み出しました」との文章が続く。

「Haven-1は当面の間は民間宇宙飛行士のためのステーションとして稼働しますが、いずれは民間飛行士による商用ミッションや政府機関の利用にも対応する予定です」とコーは言う。

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大型の展望窓からは、宇宙でただひとつの、息をのむほどに美しい地球の姿が一望できる。

Courtesy of Vast

このステーションは、「次の世代の人々が宇宙空間で生活し、活動するための拠点となる場所です。単に生き延びるための施設ではありません」とコーは言う。

そこで鍵となるのが快適な居住性だ。

「室温や照明などを自由に調節できます」とコーは言う。「ISSに滞在経験のある宇宙飛行士から聞き取った意見のなかで、わたしたちが特に重視したのは『概日リズム(サーカディアンリズム)』と呼ばれる体内時計の働きを正しく維持することです。可能な限り乗務員たちに普段と同じ感覚で過ごしてもらえるよう、照明の調整には細心の注意を払いました」

Vastの従業員は社員割引を受けられるのだろうか。

「そうだといいですね!」と、事業用操縦士の資格をもつコーは言う。「廊下を歩いているだけで、すれ違う誰もがワクワクと楽しそうにしている、こんな職場で働いたことは過去に一度もありません。自分たちが生きている間に、宇宙旅行が当たり前になる日が必ず来ると信じています。ユナイテッドの航空券と同じ値段というわけにはいかないでしょうが、スポンサーとなる組織や個人の資金提供を得ることで、多くの人にとって希望のもてる夢になることは間違いありません」

しかし、環境問題の専門家たちがこぞって指摘するように、『プラネットB(地球に代わる星)』はどこにもない。宇宙旅行にうつつを抜かすより、身近な問題に関心をもつべきではないだろうか。

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