【#57】【リンゴ追分】美空ひばり~1952年(昭和27年)【蓄音器】で聴くSPレコードの世界【Victrola Credenza】
#56 https://youtu.be/dBr776UkoQQ
#58
№11 https://youtu.be/hy21OkA4dYs
皆様、こんにちは。いつもご視聴いただき、誠にありがとうございます。今回も、「美空ひばり」さんの楽曲で、【リンゴ追分】をお送りします。
【リンゴ追分】はレコードのB面に収録されています。通常、メイン曲はA面に配置されますから、ラジオ劇の段階では、【リンゴ追分】は(主題歌ではなく)ただの挿入歌という位置づけだったようです。実際、作詞を担当した「小沢不二夫」氏は、「単純な詠嘆調の歌詞を15分ほどで仕上げた」と述べており、その歌詞を受け取った作曲担当の「米山正夫」氏も、当時は「リンゴ園の少女」(A面の主題歌)に力を注いでおり、このB面の曲にはそれほど時間をかけることなく完成させたそうです。
しかし、出来上がってみると短くシンプルなメロディーでありながら、日本人ならではの情緒が深く秘められており、それを歌い手の「美空ひばり」さんが見事に表現し、心を打つ響きとなりました。それは、15歳の少女が歌っているとは思えない高いレベルの歌唱だったことが伺えます。
このレコードがリリースされる直前、歌舞伎座で【美空ひばり単独リサイタル】が開催されました。これは歌謡曲の歌手としては初めての試みであり、しかも彼女は当時まだ15歳の中学3年生でしたから、極めて異例のことでした。
このリサイタルでは、「お祭りマンボ」「リンゴ追分」など4曲の新曲が披露されることになっていましたが、思うところがあったのでしょう、この日、劇場にいた作詞の「小沢不二夫」氏に「ひばり」さんは「【リンゴ追分】の詞が短いから、間奏部分に何かセリフを入れていただけませんか」とお願いをしたそうです。「小沢不二夫」氏は楽屋の片隅で即座に津軽弁風のセリフを書き上げ、曲は発表直前で完成しました。結果として、【リンゴ追分】はその切ないセリフと絶妙なひばり節によって、発表された4曲の中で最高の評価を受けたそうです(美空ひばり自叙伝より)。
※公演初日の1952年4月28日はサンフランシスコ平和条約発効の日(=主権回復)で日本中が沸いた日でもありました。
そして1か月後、レコードが発売され、当時としては戦後最多の売り上げとなる70万枚を記録しました。最終的には130万枚に達成し、「美空ひばり」さんの全シングルの歴代5位の曲となりました。【リンゴ追分】は、1952年のオリジナル盤(今回のSP盤)の他、後にステレオ再録音された1963年盤、1991年盤もありますが、子ども時代の「美空ひばり」さんの歌唱力には驚嘆するしかありません。その後「ひばり」さんの歌手人生における代表曲の一つとなり、時代を超えて胸を打つ名作となりました。
多くの方が「美空ひばり」は15歳の【リンゴ追分】の頃が最高だとおっしゃっていますが、うなずけます。
この曲は海外でも高く評価され、「アーサー・ライマン」が1958年発売のアルバム『Taboo』にて「Ringo Oiwake」としてカバーしたり、ジャマイカのスカバンド、「スカタライツ」が1965年に「Ringo」としてカバーするなどしています。
(注)追分(おいわけ): ①道が二つに分かれる場所を指す言葉。②日本の民謡の一種(追分節)の略称(百科事典マイペディアより)
(注)追分節:追分とも。テンポがゆるやかで、規則的な拍節をもたず、装飾的な歌いまわしの多い日本民謡の典型の一つ。長野県の追分付近で歌われていた馬子歌が関東以北に広がり各地で豊かな形に洗練された。(百科事典マイペディアより)
(注)だども:(方言)けれども
(注)じっぱり:(方言)たくさん
【重要】
著作権についてはyoutubeで一括管理。
著作隣接権(レコード会社・歌手等)については発表後70年を経て権利が消滅。
(ほとんどのSPレコードは問題なし) ただし、CD等を流す場合は権利が存続しています。
●今回投稿する動画の概要
*リンゴ追分(0:15〜)
●参考文献 講談社【昭和~二万日の全記録】(全20巻)
NHKセンター【録音で綴る昭和の記録】
NHK出版新書【昭和ブギウギ~笠置シズ子と服部良一のリズム音曲】
高山市昭和館【資料】
展望社【物価の文化史事典―明治・大正・昭和・平成 】
朝日文庫【なんたってクラシック―ぼくの一方的音楽宣言】
敬文社【昭和歌謡】
●1952年(昭和27年)略式年表
1月 -ブリヂストン美術館(現アーティゾン美術館) 開館
韓国大統領「李承晩ライン」設定
2月-世界卓球選手権大会初参加全7種目中4種目に優勝。
3月-映画『羅生門』、アカデミー外国作品特別賞受賞
4月- 砂糖の統制、13年ぶりに撤廃
NHKラジオドラマ『君の名は』放送開始
手塚治虫『鉄腕アトム』連載開始(「少年」)
【サンフランシスコ平和条約発効】・GHQ廃止=【主権回復】(4/28)
6月 – 「アンネ・フランクの日記」刊行
7月 – 16年ぶりにオリンピック参加(ヘルシンキ)。
8月- 国際通貨基金 (IMF) に加盟
『アサヒグラフ』、原爆被害写真を初公開、即日売切れ
9月 – ソヴィエト連邦、日本の国際連合加盟申請に拒否権発動
●この年の物価(1952年)
・精米10㎏: 620円(62円増)(配給米が完全精米)
・ビール価格(大びん): 130円
・コーヒー1杯 (喫茶店):28円
・たばこピース10本: 40円
・葉書: 5円・封書:10円
・山手線初乗り:10円
・電話基本料金年額: 380円
・SPレコード:170円
・LPレコード登場:2300円
・NHK受信料ラジオ: 50円
・ ガソリン1L:34円(9円40銭増)
・東京小学校教員初任給:5850円 (350円 増)
・新聞 250円(30円増)
・国立大授業料6000円(16.6倍増)
*人口 8580.8万人(126.7万人増)
※【増】は前年比 記入なしは据置き
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